Harrison’s podclass 勉強会

Podcast “Harrison’s podclass” を用いて勉強します。Harrison's podclassはAccess Medicineが提供しているpodcastです。

はじめに

Harrison's podclassとは

”McGraw-Hillの書籍「Harrison's Self-Assessment and Board Review」のボードスタイルの症例を中心に、内科の主要原則について明るく魅力的な議論を提供します”

Harrison's PodClass: Internal Medicine Cases and Board Prep on Apple Podcasts

 

Harrison's podclassの優れている点
1)症例ベースで、臨床の生きた英語を学べる
2)内科的な基本的重要事項を学べる
3)  1つ1つのエピソードが5-10分と短く、集中力が続きやすい

→1日15分でも、少しずつ継続的に勉強できる

4)Podcastがオンラインで無料で配信されている

5)定期的に配信されている (2023/3時点で96エピソード)

 

本ブログは、Harrison's podclassの上記の点に感銘を受けた筆者が ①そのエピソードの概略を日本語で解説することで内科を学習する②医学英語 (Case presentation, vocabulary)のリスニングを勉強する という目的で開始しました。第三者の利益を目的とするものではなく、ブログ記載にあたってはMcgraw Hillに許可をいただいています。

 

謝辞

素晴らしい教材を配信しているAccessMedicine, McgrawHillとHostのCharles Wiener先生, Cathy Handy先生に感謝を申し上げます。

 

 

1. 65歳、腰背部痛

【症例】
65歳男性 腰背部痛でナプロキセン (NSAIDs)を処方していた
脱水でAKIを来し入院した
初日Cr 3.6mg/dL だったが、5日目に Cr 2.1 mg/dLまで改善した
 
【質問】
NSAIDsで腎機能がさらに傷害される機序は?
A. 輸入細動脈の血管収縮
B. 輸入細動脈の血管拡張
C. 輸出細動脈の血管収縮
D. 近位尿細管の傷害
E. 尿管閉塞
 
【解説】
輸入細動脈→糸球体(血液から尿を濾過)→輸出細動脈
輸入細動脈が拡張すると腎血流が上昇し、糸球体濾過量(GFR)も増加する
輸入細動脈が収縮すると腎血流が低下し、糸球体濾過量(GFR)も減少する
輸出細動脈が拡張すると腎血流が上昇し、糸球体濾過量(GFR)も増加する
輸出細動脈が収縮すると腎血流が低下し、糸球体濾過量(GFR)も減少する
 
プロスタグランジンは輸入細動脈を拡張させる
NSAIDsはプロスタグランジンを阻害する作用があり、輸入細動脈を収縮させるため、腎血流及び糸球体濾過量が減少する
 
【正解】 A.
B, CはGFRを上昇させるため間違い
D はNSAIDsの長期使用や抗菌薬によって起こるが、本症例では該当しない
E は物理的な閉塞によって起こり、NSAIDsでは起こらない
 
【teaching point】
CKDや高齢者など腎機能が低下している患者ではNSAIDsの使用は慎重に!
代替手段としては外用薬の使用、アセトアミノフェンオピオイド
 
【今日のListening point:選択肢の"afferent" と"efferent"の聞き分け】
・"afferent" ( [æ] "エァ”フェレント)
afferent:  (血管などが) 輸入性の、(神経などが) 求心性の
・"efferent" ([iː] "イー" フェレント)
efferent:  (血管などが) 輸出性の、(神経などが) 遠心性の
発音の違いに注意しましょう!

2021. 21 67歳女性 右膝痛

4年前に右膝TKA後

スキー選手

 

脂質異常症に対する投薬なし

 

1ヶ月で増悪する右膝痛

ROM制限

 

発熱

膝関節の熱感、腫脹、圧痛

左膝は大丈夫

 

急性単関節炎の鑑別

化膿性関節炎(late pji)

関節血症

結晶性関節炎

外傷、自己免疫疾患

 

prosthetic joint infection

何年も後でも、起こりうる

白血球、ESR、CRP 1.3 mg/dL

 

A. バンコマイシン開始

B. 関節穿刺

C. 外科コンサルト

D. AとC

E. BとC

 

回答: E

sepsisは疑わないので、穿刺を先にする

PJIでは根本的には外科的治療が必要

慢性的PJI CNSなどが多い

 

Teaching point

何年も経ってから、人工関節感染が起こりうる

 

2021. 22 78歳女性 下痢

症例 介護施設での78歳女性 下痢

 6ヶ月前にCD腸炎でメトロニダゾール使用

 最近腎盂腎炎でセフトリアキソン使用

 CD腸炎: 正常細菌叢の破壊

 重症で偽膜性腸炎

 

 腹部膨満、軟、広範囲に圧痛

 腸閉塞あり

 Hb 9.2 g/dL

 

質問  CD腸炎で最もみられにくいものは?

A. 血便

B. 発熱

C. イレウス

D. 白血球増多

E. 治療後の再発

 

回答 A. 血便を来すことは稀

下痢 水様、粘液様

発熱 28% 腹痛 222% WBC↑ 50%

WBC 15,000以上→中毒性巨大結腸症、敗血症のリスク

15〜30%で再発

 

治療 

支持的治療

メトロニダゾール点滴+経口バンコマイシン

経口メトロニダゾールは第一選択ではない

フィダキサマイシンも可

2021.23 47歳女性 大腸癌検診

症例: 大腸癌のスクリーニングについて心配している47歳女性 

 

大腸癌の既往なし、家族歴なし、消化器症状なし

 

質問: スクリーニングについて正しいものは?

A. 下部内視鏡がいまだにゴールドスタンダード

B. CTColonoscopyがゴールドスタンダードになった

C. Flexible sigmoidoscopy は下部内視鏡と同じくらい有効

D. 50歳になるまでスクリーニングすべきでない

E. 便潜血+便中DNA testは下部内視鏡より感度が高い

 

大腸癌 アメリカで3番目に死亡率が高い癌

スクリーニング 早期発見 死亡率を下げたBlack American が最も多い

 

正解

A.

10年以内に再検

生検するような病変があればもう少し早めに

 

B. CTColonoscopy (virtual colonoscopy) 感度が十分でない、下部内視鏡はポリープをその場で切除し治療できるメリットもある

 

C. 右半結腸の大腸癌が増えているため感度が十分でない。歴史的にはS状結腸、直腸が多かったが…。

 

D. USPTF 平均リスクの成人に対する昨年50→45歳に引き下げた

平均リスクとは

 家族歴なし、消化器症状なし、IBDなし、ポリープの既往なし

 

E. グアヤック法→免疫学的便潜血法に変わった

便潜血陽性は特異的でない→CS

年1回のフォロー

 

便中DNA test は便潜血も調べる

感度、特異度は免疫学的便潜血法より高いが偽陽性も多い 陰性なら3年おきに再検

 

【teaching points】

・2021年、USPTFによる平均的なリスクを有する成人に対する大腸癌検診の推奨年齢が50歳→45歳に引き下がった

・下部内視鏡はいまだにgold standard

・便中DNA検査+便潜血 3年おきは非侵襲的

 

便中DNAがpromisingのよう

 

2021. 24 19歳女性 骨盤の痛み

19歳女性

救急外来を受診

1週間前から増悪する右下腹部痛

右上腹部痛も出てきた 深呼吸で増悪

 

消化管、尿路、生殖器 いずれも考えられる

 

既往歴: 軽い喘息 尿路感染なし

内服歴: 経口避妊薬

複数のパートナー、他の避妊なし

定期的に運動

アルコールなし

 

体温101.3F 脈拍 105回 SpO2 98%

呼吸音、心音清

蠕動音あり、腫瘤触れず

腹膜刺激徴候なし

 

内診: cervical motion tenderness陽性

 

血液検査 白血球↑肝酵素正常

尿妊娠反応陰性

尿検査 白血球↑

 

右上腹部痛に関して

A. CTは憩室炎を示しそう

B. 腹腔鏡で検査 

C. 急性胆嚢炎を疑って緊急手術が必要

D. HAV検査
E. TPAb検査

回答: B.

 

Acute PID → Fitz-Hugh-Curtis syndrome

Perihepatitis

淋菌→クラミジアに原因菌変わってきた

治療は両方カバー 

セフトリアキソン+アジスロマイシン

梅毒では起こらない

 

<teaching points>

胆嚢炎、虫垂炎の除外が重要

内診でCMT, エコーは正常

Peri appendicitisが起こりうる

2021. 25 28歳女性 周期性紅斑

「寒さへのアレルギー」という28歳女性

寒い場所に10年以上前に大学入学のとき引越してから寒い時に手足に紅斑

最近頻度が増えた

丸い1〜2mm大の膨疹、かゆい

30〜60分間、ほかの誘発因子はない

 

癌を心配している

既往歴、家族歴

アレルギーなし 喘息なし アトピーなし

食物アレルギーなし

 

夏には起こらない

 

内服歴 経口避妊薬のみ 5年間飲んでいる

一人暮らし

 

バイタル、身体所見は正常

冷水で手が腫れる

 

診断: 寒冷蕁麻疹

IgE介在性

2時間以内に消える

Self-limited

 

次のステップ

A. ATG
B. C1 inhibitor測定

C. 避妊薬をやめる

D. セトリジン10Mg

E. サイクロヘプシジン

 

回答: D. H1blockerが通常十分